現在医学研究の分野では組織の再生に関するものが花盛りですが、歯科の分野でも例外ではありません。
生体外で、ある種の細胞から作り出した歯を、現在人工物であるチタンを用いて行われているインプラントと同じ手法で顎の骨の中に埋め込む、といった夢のような治療が近い将来可能になるのかも知れません。
しかしながら、今のところは歯がなくなってしまったケースはいうに及ばず、わずかなむし歯で歯に穴があいてしまった場合でも、人工の材料で置き換えるしか方法がありません。風邪をひいたときには、それなりに養生をしていれば普通は自然に治ってしまいますが、歯の場合はそうはいきません。十分な休養と栄養を摂ることによって、むし歯の穴がふさがったり、なくなった歯がまた生えてくることは決してないのです。
人間が作った材料を使い、これを人間が加工調整して口の中に装着する、これが現在のむし歯治療であり、歯が抜けた場合の欠損治療です。残念ながらまったく元のとおりにはなりません。
たかが1本の歯ですが、創造主(他に適切な言葉が見当たらないのでこの言葉を使います)が創った人体の一部であり、想像を絶するような緻密な構造からなっています。これを人間が修復治療しようというのですから、そもそも勝ち目はありません。(全く同じ状態にはできないという意味です。)
ですが、材料、術式、機材その他歯科に関するあらゆる分野が日々長足の進歩を遂げています。最新の知識と技術の習得に努め、研鑽を怠らず、一歩でも二歩でも元の状態に近づけることが出来るよう努力を続けています。